#6 基底の取り換えと成分の書き換え テンソルから始める一般相対論

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~基底の取り換えと成分の書き換え~

今回から導出等が少なくなるので、計算などして確認し演習も兼ねて行間を埋めて欲しい(世間に出回っている学書に比べたら凄く丁寧な方)。
線型空間の元は基底の線型結合で表されることは#1で学んだ。この基底はそれぞれ線型独立ならば基本ベクトルじゃなくてもよかった。つまり、基本ベクトルe_1,e_2が張る2次元線型空間の元w=3e_1+2e_2a_1:=e_1+2e_2,a_2:=e_1+3e_2を基底として、
w=7a_1-4a_2
と表せる。また、a'_1:=3e_1+7e_2,a'_2:=8e_1+19e_2を基底として、
w=41a'_1-15a'_2
と表せる。基底の取り方で成分が異なることがわかる。
a_iを基底とする表現からa'_iを基底とする表現に切り換えたいとき、基底を取り換え、成分を書き換えなければならない。今日は次の問題を主題として進めていく。
v=x^ia_ia'_iの線型結合でv=x'^ia'_iと表すとき、x'^ix^iで表せ。
基底の取り換え、a'_ia_iで表現するところからやってみよう。
a'_1=\alpha a_1+\beta a_2\\a'_2=\gamma a_1+\delta a_2
とりあえず文字で置いたが、これは1本1本が2元連立方程式になっており、簡単に求まる。
\alpha=2\\ \beta=1\\ \gamma=5\\ \delta=3
よって、
a'_1=2a_1+a_2\\a'_2=5a_1+3a_2
となる。
これを、纏めてみよう。S^1{}_1:=2,S^2{}_1:=1,S^1{}_2:=5,S^2{}_2:=3とすれば、a_iからa'_iへの取り換えは、
a'_i=S^j{}_ia_j
と表せることがわかる。逆にa'_iからa_iに取り換えたいときは同じようにa_ia'_iで表現するところからやり、
a_1=3a'_1-a'_2\\a_2=-5a'_1+2a'_2
となり、これをT^1{}_1:=3,T^2{}_1:=-1,T^1{}_2:=-5,T^2{}_2:=2とおいて、
a_k=T^i{}_ka'_i
と表せることがわかる。このS^j{}_iT^i{}_kには次の関係がある。
S^j{}_iT^i{}_k=\delta^j{}_k
行列の知識がある人ならこれは逆行列の関係にあるとわかるだろう。これを使えばa'_i=S^j{}_ia_jを式変形でa_k=T^i{}_ka'_iを導くことができる。
a'_i=S^j{}_ia_j\\T^i{}_ka'_i=T^i{}_kS^j{}_ia_j\\T^i{}_ka'_i=\delta^j{}_ka_j\\T^i{}_ka'_i=a_k
これで基底の取り換えを理解できただろう。では本題の成分の書き換え「x'^ix^iで表せ」に入っていこう。
x^ia_ix'^ia'_iもvのことなので
x^ia_i=x'^ia'_iだ。これの左辺の基底を取り換えてみよう。
x^iT^j{}_ia'_j=x'^ja'_j
よってx'^ix^iを使って、
x'^j=T^j{}_ix^i
と表せる。これが主題の答えだ。逆にx^ix'^iで表すと、
x^k=S^k{}_jx'^j
と表せると勘のいいガキは思うだろう。その通りだ。
今までのことをまとめる。整えているため添字が変わっているが同じものであるため驚かないで欲しい。

基底 成分
a'_i=S^j{}_ia_j x'^i=T^i{}_kx^k
a_i=T^j{}_ia'_j x^i=S^i{}_kx'^k

今までやったことは1階の反変テンソル空間の元の基底の取り換えと成分の書き換えだった。これを任意の階でやってみたい。まず2階の基底の取り換えからやってみよう。
a'_i\otimes a'_j=\left\{S^k{}_ia_k\right\}\otimes\left\{S^l{}_ja_l\right\}=S^k{}_iS^l{}_ja_k\otimes a_l\\a_m\otimes a_n=T^i{}_mT^j{}_na'_i\otimes a'_j
よって2階の成分の書き換えはこうなる。
X^{ij}a_i\otimes a_j=X^{ij}T^k{}_iT^l{}_ja'_k\otimes a'_l=X'^{kl}a'_k\otimes a'_l\\X'^{kl}=T^k{}_iT^l{}_jX^{ij}\\X^{mn}=S^m{}_kS^n{}_lX'^{kl}
添字を整えてまとめる。

基底 成分
a'_i\otimes a'_j=S^k{}_iS^l{}_ja_k\otimes a_l X'^{ij}=T^i{}_mT^j{}_nX^{mn}
a_i\otimes a_j=T^k{}_iT^l{}_ja'_k\otimes a'_l X^{ij}=S^i{}_mS^j{}_nX'^{mn}

任意の階、r階の反変テンソル空間の元の基底の取り換えと成分の書き換えは次の表になる。

基底 成分
a'_i\otimes\ldots\otimes a'_j=S^k{}_i\ldots S^l{}_ja_k\otimes\ldots\otimes a_l X'^{i\ldots j}=T^i{}_m\ldots T^j{}_nX^{m\ldots n}
a_i\otimes\ldots\otimes a_j=T^k{}_i\ldots T^l{}_ja'_k\otimes\ldots\otimes a'_l X^{i\ldots j}=S^i{}_m\ldots S^j{}_nX'^{m\ldots n}

テンソル編はこの基底の取り換えと成分の書き換えが中心になるのでしっかり押えておこう。

補足
x'^ix^iで表せ」といっているのに、答えは
x'^j=T^j{}_ix^i
x'^jx^iで表していて、添字が違うじゃないかと思った人のために補足です。そう捉えてしまった方はすみません。僕が悪いです。文中の添字で表されているものは列記したものと同じと考えてください。例えば文中に「x^i」とでたら、これは「x^1,x^2,...」のことなんだと思ってください。つまり、今回の主題は「x'^1,x'^2,...をx^1,x^2,...で表せ」といい換えられます。
また、無理やりクロネッカーのデルタで
x'^j=T^j{}_ix^i\\ \delta^i{}_jx'^j=\delta^i{}_jT^j{}_ix^i\\ x'^i=\delta^i{}_j\left\{T^j{}_ix^i\right\}
みたいな感じで添字をそろえることは避けた方がいいです。上記の式はかろうじてまちがってはいませんが、擬標で使った文字を自由標で使うと結合律が成り立たなくなり誤った式変形をする可能性があります。
a^i\left\{b_ic^i\right\}\neq\left\{a^ib_i\right\}c^i
となります。アインシュタインの縮約記法を使うときこれに注意して、擬標と自由標が被らないように式変形の際、添字に使う文字を選択しなければなりません。


参考
一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する
https://www.beret.co.jp/books/detail/638
著者うべゆうとのメイン数学物理学ブログ「考え」
https://ubeyuto.hatenablog.com
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